2013年2月13日水曜日

The Cave "ブラックジョークはお好き?"


 The Caveはストーリーテーリングとブラックジョークが全てであり、そこに魅力を感じる人は短いながらも濃密で充実した価値ある体験を得られるだろう。

 プラットフォームはPSN/XBLA/PC/Wii U。私はフレンドからsteamのギフトでプレゼントして頂いたのでプレイしたのはPC版だ。
 私がこのタイトルの存在を知ったのはそのフレンドにギフトであげようか?と提案されたときであり、恥ずかしながら全く存在を知らなかったタイトルである。
 開発はDouble Fine Productions。その開発に参加しているRon Gilbert氏はマニアックマンション、モンキーアイランドなどのアドベンチャーを中心としたゲームで有名らしい。私が生まれた前後のタイトルだ。これも知らなかった。
 つまりこのゲームに触れたときには、初見のタイトルをほぼ先入観無しでプレイするという状況にあった。基本的に自分で買うときには初めにレビューを見、その中でも高評価なゲームで自分に合ったソフトを選んで購入し、遊んでいるので、こうした流れで触れることはとても珍しく貴重だ。


 折角頂いたのだからとプレイし始めたThe Cave。ジャンルは2D横スクロールアクションだがアクション要素は薄く、主にパズルを解きながら洞窟を進んで行くアドベンチャーゲームだ。
 まずOPは洞窟の語りが入る。このゲームは、擬人化された洞窟がそれぞれ個性的な背景も持った7人の主人公たちをその洞窟内におびき寄せたところから始まる。目的は洞窟からの脱出。
 OPが終わるとその7人の主人公から3人を選ぶことになる。選んだキャラクターにはそれぞれ個別のシナリオがあり、全キャラの共通ルートの合間に個別ルートを解いていくことになる。7人から3人を選ぶので、全キャラの個別ストーリーを見るためには最低3周必要だ。ということは共通ルートでは全く同じパズルを3回も解かされることになってしまう。1周は初見で4時間だったのでそれほど長いゲームでは無いのだが、同じパズルを解くことは単なる作業でしかない。


 準備が出来ると洞窟に潜っていく。OPから引き続き、洞窟の語りを聞きながらパズルを解き、進んで行く。その語りは軽妙で、温かみのある演技に腹黒いブラックジョークを混じえてステージ間の移動も退屈させない。このブラックジョークはThe Cave全体の作風であり、洞窟の語りや個別ストーリーでの一貫としたテーマになっている。もしあなたが物語は全てハッピーエンドで終わらなければならないという思想を持っているのなら、今すぐここで引き返すべきだ。ここには自分さえ良ければそれでいいという利己主義者しかいない。それもプレイヤーも思わず顔が引きつるほどの、とびっきりの。



 洞窟の道中には各キャラの過去が記されたスライドが散らばっている。この模様をタッチして収集していくことになる。全てを集めるとスライド形式でそのキャラの個別ストーリーに至るまでの背景を知ることが出来る。オブジェクトは意地悪な地点には置かれていない。能動的に探さなくても、目には入ってくる。パズルを解いている過程で自然と集まるだろう。


 7人の主人公はそれぞれ固有の特殊能力を持っており、それを活用しながらパズルを解く場面もある。とは言え個別ルートの極一部であり、そこまで頭を悩ませるほどのものではない。固有能力を使えると少し楽しくなる。その程度のものだ。
 基本的には選んだ3人のパーティーを順々に動かし、アイテムを拾って使い、ギミックを解く。固有能力はアクセント程度で、やれることも少ないので単調に感じるかもしれない。また3キャラを一人で動かすので移動がとても煩雑で、試行錯誤にはストレスが溜まる。しかし十分に手応えがあり、達成感を得られるパズルである。

 そういったパズルに対する不満はプレイをしている最中にはあまり感じない。何故ならそのパズルが解くためだけのものではなく、ストーリーテーリングの肝となるギミックになっているからだ。パズルを解くことによってお話が完成する。度重なる悲劇を引き起こすギミックを作り上げたのはあなただ。洞窟がお話の顛末を黒い笑いと共に語る。あなたもパズルを解きながら勘付いていたであろう、悲劇を生み出すギミックに。

 The Caveのシナリオは皮肉混じりでとても面白い。ブラックジョークは冴えている。そして大事なところはシナリオとパズルが一体化しているところにある。見ているだけのムービーは存在しない。体験とシナリオが結び付く、他ではないまさにゲームならではの楽しみを味わうことが出来る。

 3周通してプレイ時間は約9時間。2周目以降は共通ルートがわかっているために早く終わった。個人的な趣向として、ボリュームが少なめのゲームでもその時間を楽しめれば納得するので、満足度は高い。これは人から貰い受けたソフトだが、もちろん自分で購入したソフトも含めての話だ。最近のsteamのゲームはセールでとても安く購入出来るので、さらにその傾向が強まっている。大作だろうと開発費に依らず安く購入出来てしまうので、一体ゲーム事業はこの先大丈夫なのか?と老婆心ながら心配してしまう。

 ここまで紹介しておいて申し訳ないのだがどうやらXBLAでもsteamでも日本からはまだ購入できないようだ。パブリッシャーがSEGA of Americaなので滞っているのだろうか。日本語の字幕データは存在するのでいずれは配信されるだろうが……。
 PC版の話になり、また保証は出来ないのだがsteamコード自体は利用でき、日本語化も可能なのでsteam以外のサイトでsteamコードを購入し、DLすることでプレイは可能だ。
 まぁお勧めと言うよりもこういう体裁で書いてみようと思い立っただけなので、 次からは普通に購入して遊べるようなタイトルを記事にするつもりだ。(いつになるかは神のみぞ知る)