夢を見た。幾度となく起きて、また起きる。醒めることのないマトリョーシカの夢を見た。
私は布団に横たわる体を起こそうとした。
意識は覚醒し、腕が動く。上体を捻り、横に手を突き、体を起こし、床に足を下ろし立ち上がり
私は布団に横たわる体を起こそうとした。
意識は覚醒し、腕が動く。上体を捻り、横に手を突き、体を起こし、床に足を付け立ち上がり
私は布団に横たわる体を起こそうとした。
意識は覚醒し、腕が動く。上体を捻り、横に手を突き、体を起こし、床に足を
布団の上の私は、金縛りに遭っていた。首元に手を乗せられている感覚がある。全身は楔を打たれたように身動きが取れない。首元の手が少しずつ締められて行く。
金縛りについては過去の経験から学んでいる。抵抗せずに過ぎ去るのを待てば良い。怖いものなど何も無い。徐々に締まるそれはただの布団だ。意識は覚醒したが、まだ体が眠っている。先程とは逆の状態になっている。
首元の手が少しずつ緩められて行く。体が眠りから醒めた私は布団に横たわる体を起こそうとした。意識は覚醒していた。体も覚醒し、腕が動く。上体を捻り、横に手を突き、体を起こし、床に足を付け立ち上がり
私は布団の中で寝ていた。眠気に侵され覚束ない頭で思考を巡らす。
仄かに浮かぶ疑問は起きようとする意志に打ち消され、 曖昧な頭は繰り返し、歯止めの効かない体と共に、起きては起きる作業を繰り返した。
部屋の景色は形だけが存在し、色の無い透明さの向こうにはただ真っ白な空間がどこまでも続いている。
永遠とも思える繰り返しにも終わりは来た。視界に色が付き部屋は輪郭を取り戻した。体は布団に横たわっている。
意識は覚醒し、色の付いた視界は取り戻したが、妙にふわふわとした現実味の無い体がある。
起き上がり布団を抜け出した私は、居間のテーブルで朝ご飯のパンを見つけ、それを持って布団に戻ってきた。パンは自室のテーブルに置いた。朝の冷気は纏わり付くように冷たく、私は再び布団の中に入ろうとした。
そして私は今布団の中にいる。意識は覚醒し、色の付いた視界は取り戻した。妙にふわふわとした現実味の無い体がある。私の夢は醒めているのだろうか。